介護保険施設利用者アンケート調査まとめ
 
 
1.利用者アンケート調査結果で見るサービスに対する満足の状況
 介護保険施設〔介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設〕の利用者は、全体で見ると8割に近い利用者及び家族等(以下、「利用者・家族」)が、現在の施設での生活に満足されていると考えられるが、約1割前後の利用者・家族は施設での生活に満足していない状況が伺える。このことは、調査項目ごとにも、さまざまな回答として表れており、今後、各施設が自分の施設サービスの内容を見つめ直していく上で重要な示唆を与えている。
 まず、介護保険3施設ごとの特色と、利用者・家族が望まれるサービス内容が合う施設に入所(入院)した場合は、全般的に満足度が高くなっている。このことは、施設の入所(入院)にあたっては、それぞれの施設の特色や違いを十分に説明し、利用者・家族に十分に理解いただいた上で入所(入院)していただく必要性を物語っている。しかし、現実的には2割前後の利用者・家族が、施設の違いに対する説明不足や理解不足、施設の待機期間の問題、利用者と家族の意識の違いなどのさまざまな事由により、利用者本人の心身状況に適する施設に入所(入院)できていないと思われる状況も伺える。
 利用者・家族の施設サービス全般に対する満足度に大きく影響していると考えられるのは、入所(入院)時の重要事項、契約書、ケアプラン等の説明と納得、入所(入院)後の利用者等に対する職員対応の重要性であり、利用者に対する対人援助の基本に沿った対応を行うことが、結果的には利用者・家族の満足度を上げていくこととなっている。
 アンケート調査の結果からも、これらの項目が適切に実施された上で、個々具体的な質の高いサービスが提供されている時に、利用者・家族の満足度が高くなっている。
 
2.利用者・家族が満足するサービスを提供するために
 施設が提供するサービスの満足度を検討していく上で、重要な視点の一つとして利用者と共に家族からも満足を得ているのかどうかという受け止め方をしなくてはならない。そのためには、施設側が提供できるサービスについて事前に十分な説明を行い納得を得なければならない。また、具体的なサービス計画の立案に際しても利用者は当然のこと、家族の意向を把握したケアプランを示し、利用者・家族から承認を得なければならない。
 
(1) 施設側からの重要事項、契約事項の説明と利用者の納得の上での契約
 重要事項説明については、記載すべき項目についても運営基準に一定の条件が示されており、介護保険法の趣旨に沿って各施設ごとの重要事項説明書が用意されている。施設サービスを希望する要介護者及び家族等にあらかじめ書面を通して説明し、納得を得た上で、双方が署名・捺印することとなっている。重度の要介護高齢者自身が署名・捺印するケースよりも家族にお願いすることが一般的には多いのではないかと思われる。
 設問2からは、僅かながらも入所(入院)しいている施設の理解が不十分なケースが見られることから、必ずしも十分な説明がなされていない場合もあると思われる。提供できるサービスの説明と納得がその後の施設生活を送る上での満足度に大きな影響を与えていると考えられる。
 
(2) ケアプランへの希望の反映は利用者が満足して生活するためのスタートである
 重要事項説明書において利用者・家族と交わしたサービス提供にかかわる契約を具体化し、個人別に立案する介護計画書がケアプランである。施設職員はケアプランに示された「解決すべき課題」にそれぞれ専門職として関わっていくのであるから、利用者・家族の側からすると、自分のために(自分の家族のために)立案され、実行されていくケアプランに無関心ではいられない。ケアプランを立案する際に実施するケアカンファレンスに、可能な限り利用者・家族の参加を呼びかけ、家族も積極的にカンファレンスに参加いただき、希望や要望を具体的にケアプランに位置づけていく努力こそが、満足度の向上に繋がっていくこととなる。
 また、ケアプランに位置づけられた内容は、具体的なサービスとして提供していくことが重要である。ケアプランに位置づけられたサービス計画も利用者・家族と施設の契約事項である。サービス提供側の施設からみれば、立案された具体的な計画を実行していくことが、利用者・家族の満足を得るための手段であるといえる。ただ、施設の現場においては、限られた職員数の中で、個々の利用者・家族と交わした契約を実行していくために日夜努力をしているが、利用者・家族から出された希望や要望の全てを計画化することは困難な状況でもある。施設利用者全体の優先度や緊急度等により、実現が困難となる場合があることも、利用者・家族に理解いただく必要がある。
 
(3) 職員の適切な言葉遣いや対応は、利用者の満足を得るために必要不可欠
 職員の言葉遣いや対応に関しては、約9割前後の利用者・家族が優しさと思いやりが感じられると回答されている。頼んだことに対する責任を持った対応や、ナースコールの対応についても、すぐに対応してくれると、少し遅れるが対応してくれるを併せると、ほぼ同じような傾向がみられ、特に介護療養型医療施設については、医療面での緊急性を考慮してか、ナースコールへの対応に関する評価が高くなっている。これらのことは概ね職員の対応には満足していると考えられるが、一方では、少し待たされることには我慢や辛抱をしなければという利用者・家族の状況と心境が表れているとも考えられる。
 また、プライバシーに関しては、設備面や職員の対応や態度、言葉遣いなどさまざまな要因が考えられるが、プライバシーが尊重されていると回答された利用者・家族が6割台にとどまっていることは、日々のサービス提供に対する職員の対応に問題がないかを今一度振り返る必要性があると考えられる。
 実際の職員の対応に関しては、特に不満がないとの回答の一方で、多岐にわたる不満要因も挙がっている。その中でも、職員が忙しそうで話しかけられないとの回答が多く、自由記載においても、同様の意見も多く見かけられ、その他に職員数が少ない、職員を増員すべき等に見られる職員数に関する問題も投げかけられている。このことは施設だけでは解決できない介護保険制度全体の問題も含まれている。
 各施設で取り組んでいかなければならないことは、職員による利用者に対する言葉遣いや対応の差をなくし、職員間での介護の質の均一化を図るとともに、より適切な対応を目指して、職員の質をいかに高めていくかということである。職員による接し方の違いがあったり、態度に善し悪しの差がある等の意見もあり、このことは施設での利用者・家族に対する言葉遣いや対応にバラツキがあり、職員間での介護の質が均一化されていないことの表れである。全ての職員が利用者・家族に対して優しさと思いやりを持った対応が行えるよう職員を育てていくことが今後の施設の大きな課題ではないだろうか。
 
(4) 具体的なサービス内容に関して
 施設での日常生活の中で、特に食事・清潔・排泄は必要不可欠なものであり、その善し悪しは施設での生活の満足度に影響する。
 食事の献立や、味付けに関しては、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設では、半数以上が満足しているが、介護療養型医療施設では、満足していると回答した割合が他の2施設より低くなっている。これは、介護療養型医療施設の利用者に経管栄養や点滴治療をしている方が多いことも要因と考えられる。クロス集計からも、生活の満足度が食事の満足度とも関連していることからも、食事の楽しみが生活の張りとなるため、個人の嗜好を反映した食材、味付け、献立の工夫などが必要である。しかし、治療上の制限のため、本人の嗜好が反映できない場合もあり、限られた制約の中で、少しでも雰囲気作りや調理法により満足度の高い食事に対する創意工夫をしていくことが求められる。
 清潔・入浴に関しては、週2回の入浴が多く、利用者・家族の6割前後の方は満足しているが、2割近くの利用者・家族が入浴回数の増加を望んでいる。しかし、ADLの低下した重度の利用者に対する入浴には、時間や介護のマンパワーが必要であり、今後各施設において、入浴のあり方などについての検討していくことが必要である。
 排泄介助に関する満足度は、介護保険3施設ともに同じような割合である。しかし、排泄は生理的なものであり、羞恥心を伴うため、利用者の満足されていない理由にあらわされている要望は切実であり、今後更なる対応が必要である。
 医療に関しては、介護保険3施設のうち、介護療養型医療施設が最も満足度が高いと考えられたが、結果的には殆ど差がなく、生活に満足している利用者・家族は、医療にも満足している割合が高くなっている。個別の意見の中には、常時の医師や看護師の配置や早期の処置、毎日の医師回診の希望があるが、このことは、早期に医療を受けることで、生活レベルを低下させたくないという意識の表れではないかと考えられる。
 アンケートの中には施設種別により違いはあるが、レクリエーションに関する要望や、リハビリに関する要望も多く含まれており、その人らしく、持てる能力を活性化し、生活をより充実させたいとの意識が高まってきていることが伺える。
 
3.より質の高い施設サービスを目指して
 アンケート調査とクロス集計の結果からは、繰り返しになるが、施設サービスの質を高めていく上で、施設が取り組んでいくべき重要な視点が浮き彫りとなってきた。施設サービスの利用者・家族に対する十分な説明を行い、利用者・家族の希望・要望を踏まえたケアプランを作成し、利用者・家族への説明と納得をいただいた上で、ケアプランに沿ってサービスの提供を行うという一連の流れが重要であり、サービスの提供にあたっては、職員の優しさと思いやりのある対応を行うことが、施設サービスのベース部分として確立されていく必要がある。このことは、介護保険施設に共通する事項であると考えられる。
 個々の日常生活に関係する具体的なサービスについては、施設の種別による役割の違い、設備や人的配置の違い、コスト面の問題等により、全ての施設で同じサービスを提供していくことはできないが、ベース部分は基本として、各施設ごとに特徴や特色を踏まえた機能を発揮し、総合的なサービス力を高めるように展開していくことが求められている。
 各施設の現場では、限られた予算の中で、利用者・家族に対して、質の高いサービスを提供するため、日夜職員が頑張っているが、アンケート結果からは、施設の思いと利用者・家族の思いが、必ずしも一致していないということも伺える。
 今回のアンケートは、利用者・家族に対して実施した調査であり、施設側からの声は、今回の調査では明らかになっていないが、今後、施設での生活を考える時に要望の全てを施設に求めるだけで、必ずしも満足いく生活を過ごすことができるかについては考えていく必要がある。施設での生活では、施設から提供されるサービスが、利用者の生活の大部分を占めることとなるが、利用者の精神面の安定や満足のためには、家族に期待する役割も大きいのではないかと考えられる。
 今後とも、利用者・家族から選択され評価される施設となるためには、現状に満足することなく、常に、利用者・家族の側を向き、利用者・家族と一緒になって、サービス内容等について考えていくことが必要である。